としかん 音学楽記 : 吹奏楽のための第2組曲 ラティーノ・メキシカーナ (アルフレッド・リード)

  • Latino-Mexicana音楽が魅せるラテンの景色 Part #1

    楽曲について
    アルフレッド・リード × 吹奏楽のための第2組曲 ラティーノ・メキシカーナ
    アメリカを代表する吹奏楽作曲家 アルフレッド・リード。彼の代表作「吹奏楽のための第2組曲 ラティーノ・メキシカーナ」は、個性豊かで人間味あふれるラテン音楽のエッセンスを取り入れることで、ラテンアメリカ諸国の様々な情景を、彩り豊かに表現している。Part1では、第1・第2楽章につ…
  • アメリカを代表する作曲家で、特に吹奏楽界では彼の名前や作品を知らない人はいない、と言われるほど有名なアルフレッド・リード。
    そんな彼の代表作の1つ
    「吹奏楽のための第2組曲 ラティーノ・メキシカーナ」は、文字通り、キューバやブラジル、アルゼンチン、メキシコなどのラテンアメリカ諸国のそれぞれに根付く、独自の歌やダンスなどを題材にした一風変わった作品です。

    計4つの楽章から構成されている組曲は、楽章ごとにモチーフとなった音楽が異なるため、同じラテンミュージックの雰囲気ではありながら、それぞれで全く違った曲想を味わうことが出来ます。

    I. Son Montuno ― キューバ 大衆音楽の響き

    第1楽章の「Son Montuno (ソン・モントゥーノ)」は、その名の通り、キューバ発祥の「ソン・モントゥーノ」というジャンルの音楽を題材にしています。

    通常の歌曲形式の「ソン」という音楽をベースに、「もっと長く踊りたい!」という大衆の要求に応えるため、歌やコーラス、楽器による掛け合いの部分「モントゥーノ」を「ソン」の後ろに付け加えて出来てきたスタイルが、この「ソン・モントゥーノ」です。

    本作品でも、歌曲っぽい(もっと言えば、ちょっと歌謡曲っぽい感じ?)の「ソン」部分と、ラテン特有のハツラツとしたリズムの掛け合いによる「モントゥーノ」部分が再現され、活き活きとしたキューバの大衆音楽の雰囲気を感じることができます。

    II. Tango ("Sargasso Serenade") ― 静けさのタンゴと美しさのセレナーデ

    次の第2楽章「Tango ("Sargasso Serenade") (タンゴ - サルガッソー・セレナーデ)」では、タイトルの通り「タンゴ」が取り上げられています。

    タンゴと言うと、黒服の男性と赤いドレスの女性が情熱的なダンスを繰り広げ、バンドネオンの響きが独特の雰囲気を醸し出す、所謂あの「タンゴ」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
    しかし、ここで取り上げられているのは、実はそんな良く知られたタンゴ(アルゼンチン風タンゴ)ではなく、ブラジル風の、ゆったりとどこか物憂い感じのするタンゴです。

    そして、そのサブタイトルである「サルガッソー・セレナーデ」にこそ、このタンゴがブラジル風である所以が込められています。

    世界一透明な海「サルガッソー」

    「サルガッソー」とは、北大西洋の4つの海流に囲まれた海域「サルガッソー海」のことで、この海域は、世界一透明度の高い海として知られています。その透明度は、水に浮かぶ船がまるで飛んでいるかのように見えるほど。
    また、海流が交わることから波はほとんどなく穏やかで、さらに凪(無風の状態)が多いことでも知られています。

    そんな美しい海をテーマにしたセレナーデ(夕刻に大切な人を称え唄われる歌)は、ブラジル風タンゴのリズムに乗せて、幻想的できらびやかな打楽器の音、美しい木管楽器の旋律と共に奏でられます。

     

    静けさの中で沈む夕日と、鏡のように澄んだどこまでも続く海を、「大切な人」を想う愛しさとオーバーラップさせるように、リードはゆったりとしてどこか温かい雰囲気のブラジル風タンゴを選んだのかも知れないですね。






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